フランス

シャルロット・コルデ 【フランス革命】マラー暗殺を成し遂げた暗殺の天使

シャルロット・コルデの誕生と生い立ち

シャルロット・コルデは1768年、由緒正しいけれど没落してしまったノルマンディー地方の貧しい貴族の家に生まれます。彼女の祖先であるピエール・コルネイユは、かつてフランスの100フラン紙幣にも描かれた程の劇作家でした。

彼女が13歳の時、母が死亡。そのままコルデはノルマンディー地方カーン市の修道院へと入れられています。(当時の修道院は結婚できない女性(結婚の持参金が用意できない)の収容所としての役割も果たしていたそう。)

彼女は、物静かで読書を好む女性でした。特にルソーと自分の祖先コルネイユの書籍を読んでいたようです。そんなコルデがのちに”暗殺の天使”と呼ばれるとは、その当時の人たちは想像もつかなかったでしょう。修道院が革命によって閉鎖されるまでは。

混沌とした革命の渦中へ

修道院という俗世と隔離されていた場所で育ったコルデにとって、革命で疑心暗鬼になったフランスは醜悪の極みでした。修道院から出てきた彼女は、叔母の元に身を寄せます。そこに、国会から追い出されたジロンド派幹部の半数がカーン市に落ち延びてきたのです。

争いごとを好まないコルデは、比較的穏やかなジロンド派を支持していました。そこへジロンド派の幹部たちが雪崩込んできた影響は大きかったでしょう。彼らに接する内に、彼らと敵対する山岳派、中でも革命3大指導者の一人マラーに憎しみを覚えます。

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マラー暗殺の動機とは

マラーさえいなければ、フランスは平和になる。と思ったのでしょう。彼女はカーン市を出て、フランス革命の渦中パリへ向かいます。

シャルロット・コルデが何故マラーに強く殺意を持ったのか、動機ははっきりしません。読書を好み、ジロンド派へ傾倒するも、彼女自身に政治的センスがあったとは思えません。修道院という隔離した場所で育ったこともあり、世間をあまり知らない無垢な女性が、何故暗殺など考えるようになったのか。

無垢だったからこそ疑うことを知らず、「こうだ!」と決めたら思い込んでしまう部分があったのかもしれません。恋人がジロンド派にいて処刑されてしまったからマラーを恨んだという諸説もありますが、はっきりとした答えはやはり分からずじまいです。

兎にも角にも、彼女は大胆な計画を実行するためにマラーに近づきます。

マラー暗殺とシャルロット・コルデの処刑

1793年7月13日、彼女はマラーの自宅を訪ねます。マラーは持病の皮膚病が悪化していたため、政治的活動も中断し、一日中水風呂に入っている状態でした。コルデは一度は面会を断られるものの、夕方の申し込みでマラーとの面会を果たします。

靴型の風呂に入っていたマラーは、そのままコルデの持っていた刃物で胸を一突き。即死だったといいます。

マラーの暗殺 シャルロット・コルデ フランス革命 
出典:Wikipedia

民衆に絶大な人気を誇っていた「人民の友」のセンセーショナルな暗殺に、パリでは衝撃が走ります。彼女はその場で逮捕され、事件の四日後には革命裁判所で死刑の判決を受けます。

わずか25歳の美しく穏やかな女性が、当時絶大な支持を集めていたマラーを暗殺したギャップ。中には天使のような可憐なコルデの姿に恋をした男性も出たほど。アダン・リュクスという国会議員の資格を得ていた男性は、コルデを称えるビラを撒き、自分も彼女と同じギロチンでの処刑を熱望したそうです。(本当に彼は処刑されています。)

処刑場に向かうシャルロット・コルデ
出典:Wikipedia

可憐な美貌のシャルロット・コルデは、死刑判決を受けたその日にギロチンで処せられています。ですが死の直前まで毅然としていたそうです。

そんな彼女を、19世紀のロマン派の詩人ラマルティーヌは、「暗殺の天使」と名付けています。

平和になることを望んでの犯行だったかもしれませんが、彼女の犯した事件は更に革命に拍車をかけます。皮肉なことに処刑や反革命運動弾圧が広がっていったのです。

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kumano
歴女という言葉が出来る前からの歴史好き。特に好きな歴史は日本の幕末とフランス革命。 好きな漫画:ベルサイユのばら、イノサン、るろうに剣心など。