ガイ・フォークスという名前を聞いたことはあっても、どんな人か知らないという方が多いのではないでしょうか?
彼は仕込んでいた火薬で開院式に参加予定だった国王ジェームズ1世らを殺害しようとした人物です。イギリスでは今も11月5日に「ガイ・フォークス・ナイト」というイベントが行われています。
今回はそんな彼についてまとめていきます。
生い立ち
ガイ・フォークスは1570年4月13日、イングランド・ヨークで誕生します。敬虔なカトリックだった彼ですが、当時のイングランドはエリザベス1世が統治する時代。
そもそもイングランドはヘンリー8世の宗教改革から、カトリックとプロテスタントで揺れ動いていました。エリザベスはこの両者の間を取るように、中庸的な立場を取っていました。そしてそんな彼女の崩御後は、メアリー・スチュアートの息子ジェームズ1世がイングランド王として即位します。
カトリックの王が誕生すると喜んだものの、ジェームズはまさかの国教会を支持。(エリザベス1世も中庸的国教会の立場だったので、それを継いだ形と言えそうです。)
エリザベス1世のようにバランスを取る政策をするかと思えば、ジェームズは他宗教の過激派を排除する姿勢を取ります。
カトリックで過激派だったガイ・フォークスは21歳でイングランドを離れました。そしてフランスなどでカトリック側に立ち、プロテスタントと戦います。八十年戦争やユグノー戦争にも参加しています。
火薬陰謀事件
1604年イングランド国教会優遇政策が宣言される中、ガイ・フォークスは帰国し、弾圧されているロバート・ケイツビーが率いるカトリックグループに参加します。
このケイツビーはイングランドの貴族でしたが、政府から国教忌避者として危険視されている人物でした。
そしてこのケイツビーから驚くべき計画が打ち明けられたのです。それはウェストンミンスター宮殿の議事堂で行われる開院式に参加する国王と、国教徒、ついでに清教徒(プロテスタント・ピューリタン)を爆殺しようというものでした。
いつまでもカトリックに染まりきらないイングランドの現状に痺れを切らしての計画でした。邪魔な異教徒を一掃し、イングランドをカトリックへと帰依させようというのです。
これに、ガイ・フォークスは賛成し、先の戦争で身につけた火薬の知識を買われて実行犯になる決意をします。
計画の実行
そして1605年11月5日深夜、宮殿の地下貯蔵庫に大量の火薬を仕込ませておいたところにガイ・フォークスが忍び込みます。

出典:Wikipedia
ところが爆発させようとした時に、彼はその場で逮捕されたのです。
この爆破計画でカトリック教徒も少なからず巻き込まれる可能性を考えた者が、議会に参加する第四代モンティーグル男爵の元に密告していたのでした。
実行犯メンバーは、密告されたことを知ってはいましたが「こんな大それたことを信じるものか」と高をくぐっていたのです。
拷問と処刑
国王の暗殺を計画した者や実行した者は、生きながら酷い苦痛を味合わされるものです。フランス王アンリ4世を暗殺したフランソワ・ラヴァイヤックやルイ15世暗殺未遂事件を起こしたダミアンがその例でしょう。
ガイ・フォークスは最初こそ偽名を使って証言を拒み続けていましたが、拷問にかけられ、ついに首謀者ら5名の名前や計画の全貌を洗いざらい喋ってしまいました。

出典:Wikipedia
拷問直後に書かれた彼の署名が残っていますが、もはや字の形をしておらず、拷問の激しさを示す証拠となっています。
首謀者だったケイツビーは、事件発覚の3日後に襲撃され死亡。結局処刑が言い渡されたのは5人の内4名。
実行犯のガイ・フォークス、トマス・ウィンター、アンブローズ・ルークウッド、ロバート・キーズでした。彼らは拷問が行われたロンドン塔からウェストミンスターに運ばれ、イングランドで最も重い死刑と言われる「首吊り・内蔵抉り・八つ裂きの刑」が言い渡されます。(※あまりにグロテスクな内容なので、ここでは伏せます。閲覧注意レベルですが、Wikipediaに詳細があります。)

出典:Wikipedia
仲間が次々と厳しい刑に処せられる中、拷問で助けがないと自力で歩くこともできなくなっていたガイ・フォークスは、一番最後に処される予定でした。
ところが、彼は絞首台から飛び降りて死亡してしまいます。首の骨が折れていたのが、最終的な死因でした。(死んだ後も他の仲間同様、体は八つ裂きにされています。)
ガイ・フォークス・ナイト

王の命が助かったことを祝って、ロンドン市民はかがり火を焚いて祝ったとされています。そしてのちに、ガイ・フォークス・ナイトとして、彼を模した人形を町中引き回して、夜に人形を焼く風習が生まれました。現在は人形を焼くことは少なくなったようですが、花火などをあげて祝うことは続いています。
参考文献
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